災害で役立った一枚布の抱っこ紐

熊本で始めの揺れがあってから、数か月・・・まだ揺れが続く熊本在住のベビーラップアドバイザー・高木園子さんから届いたメッセージをご紹介します。


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4月14日夜と16日深夜に熊本を2度続けて襲った最大震度7の地震。その渦中にあって、子どもを二人連れて避難し車中泊を続けた経験から災害時必要とされる知恵をお伝えする活動を続けています。

避難時に一番役立ったもの

今回の地震で我が家が避難し車中泊を続けている間、自宅から持ち出したもので一番役に立ったのはDIDYMOSのベビーラップでした。
ベビーラップとは幅90cm弱長さ4m程の一枚布からなる抱っこおんぶ兼用紐のことで、イメージとしては兵児帯のようなものです。通常0~2歳程度の赤ちゃんを抱っこしたりおんぶしたりする時に活用しますが、我が家に赤子はいません。5歳になる次女が赤ちゃんの時に使用していたものです。でも、経験のない前震での揺れにおびえて動けなくなった次女を素早くおぶって5階から階段で避難できたのは、ベビーラップがあったからでした。

一枚布のおんぶ紐ここがすごい!

  1. 身体に負担が少ない → 紐でくくりつけるわけではなく、幅広の布の面の摩擦力で子どもを固定するので背負う人の負担が少ない
  2. 重心が安定する → 自分の重心と子供の重心がピッタリと密着して安定するので重さを感じにくく動きやすい
  3. 汎用性がある → 子供が眠るとブランケットになり、二つ折りに畳んで肩に羽織るとウールのニットより温かく、小さく畳むとクッションに。車中泊時はクリップでとめて人の目を避けるためのカーテンの役目をし、ストレスで無口になっていた長女のプライベート空間を確保する役目も果たしました。
  4. 耐久性がある → 縫い目継ぎ目がないので大変丈夫で背負う重さ制限がありません。なので、新生児の縦抱き抱っこも安全に安定してできるし
    今回の我が家のように、5歳児を背負って逃げることも可能なのです。

汎用性のある一枚布をいろいろ工夫して利用することで子どもをおぶったり、荷物を背負ったり、衣としたり・・・それは戦前から戦後すぐまでの日本で当たり前に伝承されてきた生活の知恵でした。でも、便利な道具がいつでもどこでも買えるようになった現代の日本ではそれが途絶えてしまったように思います。
被災時の持ち物を極端に制限される生活で試されるのは、いかに工夫して乗り切るかという意志と知恵でした。震災前、たまにおんぶをせがむことはあってもさすがに5歳になった次女は重たく、ベビーラップを使う機会は減っていましたが
それでも、発災時すぐにベビーラップを手にとることができたのは、東日本大震災当時、何度も流れる映像を通して、「もし災害に襲われたら逃げるために優先することは何だろう」と無意識に何度も頭の中でシュミレーションしていたからだと思います。

一番大切なのは、子どもとはぐれない事、素早く逃げること。そのために必要なものとして常備していたのがベビーラップです。普段はブランケットとして愛用していましたが、本当に役に立ちました。

避難中忘れられない光景があります。
水汲みの列に並んでいる時、前に並んでいた若いお母さんが背中に赤ちゃんをおんぶして、小さいお兄ちゃんの手を引きながらポリタンクを持って帰る姿です。赤ちゃんの手足がダランと伸びて低い位置で背中にくくりつけられている状態のおんぶ紐を使われていて、お母さんの肩にも腰にも大きく負担に見えました。そのお母さんが振りかえった時の疲れ切ったお顔が忘れられません。

災害時に密着して親子で癒す

非常時では抱っこやおんぶは赤ちゃんの身を守るための手段ですが、それだけではない側面も大きいのです。震災以降次女はは「おんぶして。おんぶ紐でおんぶして」とよくせがむようになりました。「高いところで、お母さんの背中で、安心するから」だそうです。安定した抱っこは子供の心を安心させるし、肌と肌の触れ合いはお母さんの心を癒します。それには親子ともども体への負担が少ない抱き方であることが大前提です。

震災前、身につけていたベビーラップアドバイザーの知識を基に今、被災したお母さん達にベビーラップを体験してもらったり、お貸しする活動を続けています。幸せな抱っこを体験してもらう間、必要な作業を代わりにお手伝いする活動もしています。

微力ですが、お伝えし続けることで一人でも多くの方に情報が届き、

赤ちゃんのいるご家庭の防災にお役立て頂くことを願っています。