新生児をどうやって抱っこする?赤ちゃんの発達を促す適切な抱っこの方法を知っている?
0. 抱っこをしても赤ちゃんが泣き止まない?
「どんな風に抱っこすれば赤ちゃんにとって安全なのかわからない。」
赤ちゃんが生まれたら誰もが必ず「抱っこ」するにも関わらず、抱っこに関する不安やお悩みを抱えている人は案外多いです。
「抱っこ」は、赤ちゃんの健全な成長に絶対に欠かせない育児行為のひとつですが、長年の研究により、抱っこが移動や赤ちゃんをあやすだけではない、ある効果や役割があることがわかっています。
1. 抱っこの役割と正しい姿勢
私たちは、”何故?”抱っこをするのでしょうか?
人類にとって「抱っこ」はどんな役割や効果があるのでしょうか?
新生児の身体の特徴に合った赤ちゃんの姿勢のポイントとは?
抱っこの仕方についての適切な情報を知り、 子育てに活かしてみませんか。
抱っこで育つ?!赤ちゃんの身体と心
哺乳類の動物の赤ちゃんは生まれてすぐに立ち上がることを知っていますか。 行動生物学上で「離巣性」に分類される馬や牛などの動物は、生後直ぐに立ち、自分で餌を取りに歩きます。離巣性の哺乳類と比べると、人間の赤ちゃんは、立って歩くだけでも約1年程度を要します。
つまり、人間の赤ちゃんは骨格・筋肉・ 脳などが未発達のままで産まれてきます。 抱っこされて肌のぬくもりを感じるまでは、人間の未熟で小さな新生児は不安でいっぱいです。 抱っこによる触れ合いにより、以下の効果が立証されています。
- 呼吸や心拍が安定し、体温が上昇し、体重が順調に増加
- 赤ちゃんが落ち着き、親子の絆が深まる
- スムーズな授乳スタート
そして、成長がすすむと視力や脳が発達し、親の存在を目で見てわかるようになってきます。
また、赤ちゃんは身体に重力を感じながら、姿勢を保つことを学んでいきます。 大きな頭に対して体は小さく、両脚を体に引き寄せて、仰向けに寝転がっている新生児の姿勢では、 体のバランスを保つことだけ精一杯。 赤ちゃんがリラックスし、眠り、自由に 呼吸し、親とコンタクトできるように、快適な抱っこ姿勢でサポートしてあげることが大切です。
親子の絆形成も育む抱っこの方法!
「赤ちゃんを愛おしい」と感じますか?
「今はまだよくわからない」と感じていますか?
我が子に対しては、自然に愛や絆が授けられるような気がしますが、実はそうではありません。赤ちゃんと親も、人と人です。 身体の触れ合いや授乳、お互いの匂いを嗅いだりすること、アイコンタクト、様々なコミュニケーションのプロセスの中で、絆が段々と形成されていくものです。このようなコミュニケーションの中で愛着や絆形成を深めることに関わる「オキシトシン」というホルモンが、より分泌されることがわかっています。
「抱っこ」はオキシトシンの分泌にも関わり、親子の絆形成や、我が子を愛おしいと感じる気持ちを助けてくれるものでもあるのです。
親子共に快適な密着抱っこをすると、自然と「なんだかいつも以上に可愛い・・・」と感想を口にする人は少なくありません。我が子が可愛い、と思える瞬間が増えていくと、それだけで子育てはプラスのイメージになっていきますよね。
「我が子が可愛いと思えない。私は母性がなくておかしいんじゃないか・・・」こんな悩みを耳にすることがありますが、大丈夫!
赤ちゃんへの愛着や親子の絆は、パパはもちろん、十月十日いっしょだったママだって、はじめて赤ちゃんに会ったその日から深まっていくものなのです。
快適な抱っこをしながら、親子の絆を今日も深めていきましょう。
赤ちゃんは抱っこされる能力を持って生まれる?!
抱っこは「親」が赤ちゃんにするもの、と思うかもしれませんが、実は赤ちゃんもまた、大人に抱っこされるための能力をたくさん持っていることがわかっています。
馬やキリンなどのすぐに立ち上がる哺乳類動物を「離巣性」に分類できますが、人間は同様の分類法(動物行動学)で考えてみると、生まれてから一定期間抱っこで育つ「授抱性」という分類に当てはまります。さらには霊長類などと同じ「アクティブな授抱性」だということがわかっています。
パッシブ(能動的)な授抱性に分類されるカンガルーなどは、抱っこされて育つものの、袋に入って育ち、親も子も、抱き、抱かれる能力は持っていません。 アクティブな授抱性の哺乳類は、親が腕や身体で赤ちゃんを抱き、子は大人に自分からしがみつく能力を持っています。
抱っこでM字姿勢を保つことはなぜ重要?
「股関節脱臼」という言葉をご存知かもしれませんが、その中身や、どういう状態だと脱臼が起こるのか、また脱臼が起きるとどうなるのか、なぜM字姿勢で脱臼を予防できるを詳しくご紹介します。
新生児の赤ちゃんの身体は、大人とは違います。
頭の大きさ、手足の長さなど見た目でわかる違いだけでなく、実は骨や内臓など身体内部も違います。例えば多くの関節がまだ骨化されておらず、柔らかい軟骨状態です。
そして骨盤は「後傾」と言われ 、お股が真下ではなく前を向き、膝がお腹に近い状態が自然な骨盤の傾きです。
赤ちゃんが床に寝転んで安定しないのは、この”骨盤の後傾 ”も大きく関係しています。
自然なM字姿勢では、赤ちゃんの膝は体側に引き寄せ(屈曲)、同時に開き(外転)、足の裏でもしがみつくように太ももの前面は外を向きます(外旋)。この状態では、大腿骨が理想的な角度で股関節にはまっています。
赤ちゃんの脚を伸ばした状態で抱っこすると、骨盤の寛骨臼と呼ばれるくぼみに大腿骨が適切にはまらない状態になります。そのまま骨化が進むと、股関節形成不全ないし股関節脱臼につながる恐れがあります。
股関節脱臼は動き出す前の赤ちゃんでは症状が分かりにくいです。また、脱臼までいかない骨が正常に発達していない状態の股関節形成不全はさらに分かりにくく、大人になってから発見されるケースもあります。
ドイツなどの中央ヨーロッパでは、赤ちゃんの定期健診(生後4~6週間)に股関節を超音波検診で確認しますが、日本ではまだ導入されていません。だからこそ、家庭で知って守ってあげることが尚更大切です。
正しいM字姿勢については、日本でも小児整形外科 学会がリーフレットを発信して啓蒙しています。詳細はこちらもご覧くださいね!
赤ちゃんの抱っこの仕方は縦抱き、それとも横抱き?
2. 新生児の抱っこの仕方
肩抱き:密着した縦抱きで赤ちゃんが落ち着きやすい
ゲップをさせるときのような肩の高い位置の抱っこは、新生児におすすめです。大人に身を預け、赤ちゃんがリラックスできるため親子の絆が一層深まります。
◆赤ちゃんにとってのメリット- 密着する面積が大きく大人に体重を分散できる
- 気道を確保しやすい姿勢
- 重心が高く腕への負担が少ないため、腱鞘炎の予防
- 体のやわらかい新生児でも安心してできる縦抱きの方法
新米パパ、ママが手軽にできる横抱き
横向きに両腕の中で寝かせるような抱っこは、新米パパやママにとって挑戦しやすい抱っこです。頭部が安定し、脚のM字姿勢をサポートすることがポイントです。
◆パパママのメリット- 新生児の抱っこに慣れていないパパやママにも挑戦しやすい
- 頭が下がらないように必ず肘で支える
- 脚は伸ばさないよう気をつけ、両足を上げて、M字姿勢を確保する
- 手と口の出会いを促すため両手が身体の前に来るように抱く
- 気道確保のため、背中は丸くなりすぎないように注意!
悪い抱っこ姿勢の注意点
- 赤ちゃんの脚が伸びて下がり、M字姿勢が保たれない
- 赤ちゃんの手が胸の前になく、身体がねじれるような形になっている。
- 大人の腕が股の間にきていて、赤ちゃんの身体のねじれをさらに大きくしやすい
- 赤ちゃんの頭が後ろに下がってしまいやすい
お腹のガスがでやすいコリック抱き
赤ちゃんが泣きやまない一つの原因は、お腹にガスがたまってゲップが上手く出ないときです。お腹がパンパンに張っているとき、便秘しやすい赤ちゃんに腹抱きが効果的で「コリック抱き」や「木の上の虎のポーズ」とも言われています。空いている手で、背中をやさしくなでると赤ちゃんが落ち着きます。パパの大きな腕なら片手で抱いても安定しやすいです。
◆赤ちゃんにとってのメリット- うつ伏せに抱っこして、前腕で赤ちゃんを支えると、ガスが出やすくなります。
- 発達にとって欠かせないうつ伏せ姿勢の練習にもなります。
- ガスが溜まることに起因する、赤ちゃんの大泣きの予防
- 大人の片腕全体で赤ちゃんを支え、首と頭がサポートされていることを必ず確認すること!
- 赤ちゃんの顔は必ず外側を向けましょう
- 赤ちゃんの身体を真っ直ぐ、ねじれないように抱きましょう
- 赤ちゃんの膝が自然に曲がるようにサポートしましょう。太ももを横から強く圧迫したり、脚を真っ直ぐ伸ばさないように気をつけてください
関西の日本テレビ系列「読売テレビ」にてコリック抱きが取り上げれました。
アイコンタクトが取りやすい膝抱き
アイコンタクトが一番取りやすいこの抱っこの仕方は赤ちゃんが目が覚めているときにぜひ取り入れましょう。新生児の焦点の距離は顔から20~26cmです。膝抱きされると、パパママの顔までの距離は焦点が合い、顔をしっかりと認識できています。
◆赤ちゃんにとってのメリット- ママやパパの表情が見える
- アイコンタクトによりコミュニケーションへの関心が高まる
- リラックスしながら赤ちゃんとアイコンタクトがとれる
- 膝から太腿で背中やお尻を支える
- 片手で赤ちゃんの頭と首を安定するようサポートする
パパにおすすめの抱っこ
パパの大きな腕なら、肩で頭と首をサポートし、もう片方の手でお尻を支えます。赤ちゃんの身体の特徴に合った姿勢を保ちながら顔と顔を合わせることができ、縦抱っこの準備段階にもなるでしょう。
3. 生後1ヶ月以降の抱っこ
基本の抱っこは縦抱き
生後1ヶ月頃に、赤ちゃんに縦抱きを要求している表情や気持ちが表れます。赤ちゃんの周囲への関心が高まってきた一方、骨格や筋肉がまだ十分発達していないので、体重を大人に分散できる密着した抱っこが安定してリラックスも促します。
広い面積で大人に触れる対面の縦抱きでは、自分自身の身体を体感し、身体のコントールを学習しやすい状況です。脚のM字姿勢が保ちやすい縦抱きは赤ちゃんの心身の発達にとってはたくさんのメリットをもたらしてくれます。
赤ちゃんとの生活にも慣れ、一緒に外出が始まる頃が抱っこ紐の出番でもありますが、おうちの中の素手抱っこでも、ぜひ縦抱きに切り替えましょう。重くなってきた赤ちゃんの横抱きが続くと、M字姿勢がサポートしにくくなるだけではなく、長時間の横抱きがママの腱鞘炎の原因になります。授乳時以外は横抱きのメリットはないと言ってもいいでしょう。
首すわりまでの抱っこのポイント
4.素手抱っこの限界
お世話や移動など、赤ちゃんとの生活には欠かせない素手の抱っこですが、首のすわっていない赤ちゃんの抱っこは両手が塞がってしまうのが困りもの。また、新生児を素手で抱くと、腕や手首への負担は大きいので、できれば長時間の抱っこは避けたいものです。
そんなときに抱っこ紐を使えば、負担を軽減し、両手が空いて自由になります。抱っこでないと寝てくれない、泣き止んでくれないときに、ベビーウェアリングなら家事の時間やママの休憩時間をとりやすく、赤ちゃんとの生活の多くのお悩みを解決できます。
抱っこからはじまる豊かな子育て
赤ちゃんにとって自然で快適な姿勢で抱っこやおんぶをすることは、健康・発育面でのメリットもあります。また、抱っこやおんぶをする大人の負担を軽減し、寝かしつけやワンオペ育児など子育ての悩みを解決する糸口や、赤ちゃんとの生活をより楽しむきっかけとなることもあります。5. 素手の抱っこの延長にある、自然な姿勢の抱っこ紐
- 優れたフィット感で素手の抱っこと同じような密着感が味わえる
- 赤ちゃんの適切な姿勢を保つ
- 赤ちゃんの体重を大人の上半身全体に分散させる
赤ちゃんに優しい抱き方ができるおすすめ抱っこ紐
一枚布で赤ちゃんを包み込むように抱っこするベビーラップ。どんな親子の身体にもフィットして、両肩や上半身全体への体重分散性が最も高く、新生児から安定した抱っこができます。
ベビーラップよりも短い布にリングが縫い付けられたリングスリングも、親子の身体にぴったりフィットします。片方の肩で支える簡易的な抱っこ紐は、コンパクトで携帯性に優れ、持ち運びにも便利です。
柔らかな密着感と簡単装着を併せ持つベルト式抱っこ紐もおすすめです。小柄なママにも使える究極なフィット感や新生児から安心した縦抱きを実現したオリジナル構造はディディモスならでは。
6. 赤ちゃんの抱き方講座のご案内
抱っこは、産後の子育てで最も多い悩みの一つです。慣れない抱っこで赤ちゃんが泣き止まない、眠ってくれない、抱っこが辛いなどのお悩みがあれば、早めに抱っこやおんぶの専門家にご相談ください。
出張講習を含む対面講座をはじめ、自宅に居ながら気軽に参加できる無料オンライン講座やオンラインプライベートレッスンまで赤ちゃんの正しい抱き方や抱っこ紐の快適な使い方を学べる様々な講座をご用意しております。
7. 抱っこに関するよくある質問
赤ちゃんの股関節脱臼を予防する抱っこの仕方は?
腱鞘炎になってしまったときの抱っこは?
生後2ヶ月の赤ちゃんにおすすめの抱っこの仕方は?
首すわり前の赤ちゃんの頭を支えなくても大丈夫?
寝かしつけににおすすめの抱っこの仕方は?
パパの抱っこの仕方のポイントは?
赤ちゃんの股関節脱臼を予防する抱っこの仕方は?
赤ちゃんのお世話や抱き方に気をつけることで、発育性股関節形成不全を予防することができます。赤ちゃんの股関節は軟骨で柔らかいため、横から押さえつけるような抱っこ、脚を伸ばしたままにしないなどの注意が必要です。 赤ちゃんの膝がお尻よりも高い位置のM字型の開脚姿勢で、大人の身体にしがみつくような縦抱きは、股関節の発育を促します。 首すわり前の赤ちゃんは、肩から首の後あたりを優しく支えて抱きます。
腱鞘炎になってしまったときの抱っこは?
抱っこ紐を使用した適切なベビーウェアリングをすることで、赤ちゃんは落ち着き、大人も腕への局所的な負担を減らすことができます。腱鞘炎になってしまったときはできるだけ腕を休めるのが一番ですが、お世話が必要なときは赤ちゃんに大人の身体を近づけて抱き上げる、手首や指先の力をできるだけ緩めるよう脇をしめて、腕や身体で赤ちゃんを支えるように抱きます。
生後2ヶ月の赤ちゃんにおすすめの抱っこの仕方は?
赤ちゃんの股関節はまだ未熟のため、横から押さえつけるような抱っこ、脚を伸ばしたままにしないなどの注意が必要です。赤ちゃんの膝がお尻よりも高い位置のM字型の開脚姿勢で、大人の身体にしがみつくような縦抱きは、股関節の発育を促します。赤ちゃんの頭がぐらつかないように、肩から首の後あたりを優しく支えて抱きます。素手の抱っこなら、ゲップをさせるときのような大人の肩で支える抱っこがおすすめです。
首すわり前の赤ちゃんの頭を支えなくても大丈夫?
首がまだすわっていない赤ちゃんを縦抱きする場合、背骨を胸椎辺り(肩甲骨の間)にしっかり支えることがポイントです。背骨の「し」字カーブで対面抱きされる赤ちゃんは、体重をパパママの身体に預けることができ、リラックスできます。赤ちゃんの後頭部部分を手や抱っこ紐で押し付けるような支え方は避けましょう。赤ちゃんにとって呼吸しにくい不快な姿勢です!
寝かしつけにおすすめの抱っこの仕方は?
ぴったりと密着して安定感があり、赤ちゃんがリラックスのしやすい、ベビーラップやスリングをはじめとする抱っこ紐がおすすめです。大人の負担を減らし、寝かしつけをしながら家事や仕事を済ませて、赤ちゃんが眠った後は一緒に休むことができます。
パパの抱っこの仕方のポイントは?
パパはママよりも力があり、抱っこの負担は感じにくいことが多いので、色々な抱き方を覚えるとお世話のときに便利です。 抱っこ紐を使うときは、赤ちゃんのおでこにキスできることを目安に高い位置になるように注意しましょう。