新生児の抱っこ紐の選び方を聞く!

新生児から使える抱っこ紐の選び方って・・・? 赤ちゃんにとって良い抱っこひもや、自分にとっても快適な抱っこ紐をどのように見つけたら良いか、特に初めての抱っこ紐って選び方の基準がわからず、色んなタイプの抱っこ紐を見て悩んでいる方は少なくないのではないでしょうか。

今回は整体師で抱っこやおんぶの専門家の堀内千賀子さんに新生児の抱っこ紐選びのポイントについて多くの質問をしてみました。とても興味深いお話をいただけましたのでご紹介いたします。<以下>



新生児からの抱っこ紐の選び方で一番悩んだ点はどのような事ですか?

私自身、長男を出産した8年前の妊娠中にあれこれと、おすすめワードが多くてネットサーフィンし悩んだたことを思い出します。当時、最も悩んだのは「赤ちゃんにとってどうなのか」ということです。なぜなら、整体師として学んでいたのでママの体と赤ちゃんの体は全く異なり、大人の整体知識を赤ちゃんにあてはめることができないからです。新米ママの私は自分が赤ちゃんだったらどれが気持ちいいかな?など、置き換えることでしか知るすべはありませんでした。
ベビーウェアリング(密着した抱っこ)について勉強して分かったことは、抱っこ紐に限らず様々な赤ちゃん情報や育児用品が溢れ、新米パパやママが悩むのは当然!抱っこ紐など、赤ちゃんの発達に商品選びは、専門家に自分の迷いや質問を相談するのが一番ということです!

新生児の身体はママたちとどのように違う?

新生児とママやパパの身体では多くの違いがあります。新生児ベビーから赤ちゃん成長の身体について正しい知識を得ると、一般的な「人気」や「おすすめ」で選ぶのではなく、自分の赤ちゃんにぴったりの抱っこ紐を根拠に基づいて選ぶことができるようになります。

赤ちゃんの身体と感覚について

赤ちゃんは未熟というイメージがありますが、その通りです。目(視覚)はまだぼんやりとして、骨や筋肉は柔らかく、自分で手足を動かすような身体のコントロールもまだうまくできません。その一方、脳の神経細胞はすでに大人と同じ数をもっていると言われます。またにおい(嗅覚)、味わい(味覚)、聞く(聴覚)なども大人と同じ程度に発達しており、特にさわる、触れ合う感覚(触覚)や姿勢を感じること(体性感覚・前庭覚)は敏感で、外界を感じ、外界とつながる重要なセンサーの役割をしています。

新生児の背骨はまるい”Cカーブ”ではなく”しカーブ”

赤ちゃんの姿勢しカーブ

赤ちゃんの背骨は「C字カーブ」と聞いたことがあるかもしれませんが、「し字カーブ」という方がしっくりきます。
「し字カーブ」は、赤ちゃん特有の膝を曲げた姿勢のため。膝を高くあげると、骨盤もそれにともなって少し後ろに倒れるため、背中も少し丸みをおびたようになります。 ママでも、体育座りをすると背中をまっすぐにしづらくなりますね。
子宮から出てきたばかりの新生児でも、丸まりすぎた姿勢は苦しいものです。水中世界からこの世に生まれてくると、赤ちゃんは肺呼吸になります。肺を広げて呼吸するのに、丸まった姿勢は快適でしょうか?少し窮屈ですね!
赤ちゃんは重力に抵抗する筋肉がまだ弱いため、抱っこをするときは背骨全体をしっかりとサポートしてあげることで胸が広がり呼吸がしやすい姿勢になります。

抱っこひもで股関節をM字型で抱っこする姿勢がおすすめ?

新生児骨格軟骨部

新生児の骨格は大人に比べると軟骨の部分がとても多く、発達途中です。股関節もまだ軟骨状態であり、負荷がかかりやすい部分です。正しいM字開脚でいるとき股関節は最も安定し、健全な股関節の発達を促します。 
正しいM字型開脚
といっても、何度の角度で!と細かく考える必要はありません。欧米のベビーウェアリング理論では、赤ちゃんはママやパパに『しがみつく』ためにこのような姿勢をとると考えられていますので、しがみつきやすいよう「膝がお尻より高い」姿勢になっていることが目安です。 足の裏が外向きになってお姉さん座りのようになっていると、股関節がねじれていることになりますので、「足の裏でも大人に『しがみつこう』としている」と覚えてください。
日本小児整形外科学会のパンフレットをみると、「好ましい姿勢:両脚をM字型に曲げてに開き、良く動かしている」とあります。素手の抱っこでも実践できますので、ぜひチャレンジしてみてください。 少し専門的になりますが、膝が胸に近づく動きのことを「屈曲」、脚を左右に開く動きを「外転」、太ももの前面が外を向く動きを「外旋」と言います。少し複雑なので、詳細はこちらのページをご覧ください。 参照:日本小児整形外科学会


新生児から縦抱き抱っこがおすすめとは本当ですか?

縦抱きがおすすめな3つの理由をお伝えしたいと思います。

おすすめ理由1:新生児の仰向け姿勢は不安定

不安定な新生児の姿勢

私たち大人が大の字に寝転がると手足を広げ、背中やお尻でもしっかり体重を分散できます。しかし、新生児は大人と比較すると手足は短く、お尻(骨盤)は頭より小さい上、自然と膝を胸に近づけたM字型開脚姿勢の特有の骨格や姿勢(手足を曲げたしがみつき姿勢)です。
赤ちゃんは床に仰向けに寝転ぶことはできますが、床との支持面積が少なく、大人と比べ不安定です。大人のようにリラックスする時には向かないのです。眠るときは誰だってリラックスしたいので、赤ちゃんはリラックスできる抱っこを求めるのかもしれませんね。

おすすめ理由2:横抱きでは保持しにくいM字開脚

赤ちゃんを高い高いする父

赤ちゃんは自然と親に『しがみつく力(抱き上げると膝を曲げる反応をする)』をもっています。横抱きでは『しがみつき姿勢』がとりにくく、手やお腹で未発達の柔らかい股関節を押さえがちになります。
特にお子さんがしっかりと歩き出すまでは縦抱きで正しいM字開脚姿勢を気に留め、将来の健康な身体の枠組み作りをサポートしてあげたいです。

 

 

おすすめ理由3:高い位置の抱っこ

新生児を抱っこする女性

抱っこする時の快適な高さ(位置)について考えたことはありますか?親子がまるでパズルのピースのようにぴったり抱くことができる快適な抱っこの高さが見つかれば、抱っこがさらに快適になります。
ぴったりはまる位置というのは、赤ちゃんの体重がママやパパの胸にしっかり乗って体重分散し、腕だけでなく身体全体を使って抱っこできているときに感じます。ちょうど出生直後に行われる母子の皮膚接触と同じような、何かにもたれかかった姿勢で赤ちゃんを胸に乗せた時のような感覚です。赤ちゃんは体重を大人に預け、大人は赤ちゃんがグラグラしないよう背中を手や腕でしっかりと支えます。安定した姿勢なら、お互いにリラックスすることができます。肌と肌のふれあいによりオキシトシンがたくさん分泌され「愛おしさ」を感じます。うっとりとアイコンタクトをとることもできます。それによって親子の絆が深まり、私たちは親に、そして家族になっていくと感じます。


なぜ密着する抱っこひもがおすすめですか?

赤ちゃんをベビーラップで密着抱っこする女性

第一に、グラグラせず密着していることは転落の危険を回避します。リラックスやオキシトシンの効果については、先ほど説明した通りです。 快適な高さ(位置)が見つかったら、赤ちゃんの体重が胸に乗っていることを感じましょう。この時も赤ちゃんの膝をお尻より高く保った『しがみつき姿勢』がとれていると、赤ちゃんの姿勢や身体が安定します。ぴったり密着すると赤ちゃんは大人の身体に体重を分散することができ、楽に姿勢を保つことができます。 大人にとっても、生まれたてでふにゃふにゃやわらかい赤ちゃんが安定してくれると楽に抱っこすることができ快適です。
密着して大人の動作を感じ共に動作することは、「身体感覚」を覚え「身体をコントロールする力」を育みます。また、しがみつき姿勢で安定して密着することで、身体の中心(体幹)の筋肉が鍛えられます。腕や手などの細かい運動の発達には体幹の安定が不可欠です。 このように密着した抱っこは安心・安全だけでなく、心と体、運動能力など様々な赤ちゃんの発達を促してくれるでしょう。


新生児から使用できる抱っこ紐の条件は何だと考えられますか?

赤ちゃんの自然な姿勢である『しがみつき姿勢』を保つことができ、なおかつ高い位置で密着できるものを選びましょう。具体的には以下4つのチェックポイントを確認してください。

1:赤ちゃんの脚の開きに合わせてシート幅を調整できるもの

赤ちゃんの膝がお尻よりも高くなるM字開脚をキープするためには、赤ちゃんの脚の開きにぴったりのシート幅(お尻から膝までの部分)が不可欠です。母子手帳の成長曲線シートを見たことはありますか?赤ちゃんは生後半年頃までは特に急成長しているのがわかります。抱っこ紐のシートが膝裏ぴったりに届くようにシート幅を調整できるものなら、赤ちゃんに優しくM字開脚を保つことができます。

調節できる新生児からの抱っこ紐シート幅が足りないと赤ちゃんの脚がまっすくにぶら下がった抱っこ姿勢になり、M字開脚が保てないばかりか、背中が反りやすく赤ちゃんの「反り返り」の原因になることも。
逆に、シート幅が広すぎる場合は開脚しすぎとなり、自然な股関節の動きとは逆の内旋(内側にねじれる)という動きが起きてまだやわらかい関節に負荷がかかってしまいます。大人でも、ずっと開脚姿勢をするのはつらいですね!またどちらも身体が安定しないため、身体感覚も覚えにくいでしょう。

2:抱っこ紐の背当て布で赤ちゃんの背中全体をサポートできるもの

正しい「M字開脚」と「し字カーブのゆるかな背中」を保つことが、快適な縦抱きの秘訣です!つまり、成長に合わせて抱っこ紐の「シート幅」や背骨全体を抱っこ紐の布部分などでサポートできるように「背当ての高さ」を調節できることも抱っこ紐選びで重要です。

3:赤ちゃんのお尻を立体設計でしっかり包み込むもの

 

しっかりサポートできる新生児からの抱っこ紐
シート幅や背あての高さがぴったりでも、立体構造でなければ理想的なM字開脚が保てないことがあります。もしお尻が深く沈まないペタンコ設計であれば、張り付けられたような姿勢になり、『しがみつき』姿勢とは別物になります。
立体的シート構造の抱っこ紐なら、抱っこに不慣れな新米ママやパパにも新生児からの股関節の開脚や「し」カーブ背中に整えることが容易です。
イメージしてみてください。写真のように赤ちゃんのお尻は深く、膝が高い位置にある立体的な姿勢であれば、大人に寄りかかり体重を預けることができます。このような抱っこなら、うつぶせ遊びのように大人の胸を押したり引いたりすることができ、筋肉とバランス感覚が鍛えられ、上半身を自らコントロールできるようになるのを助けると考えられています。参照:Creative Nursing(英字論文)

 

4:新生児と密着した抱っこでママも快適

ウエストベルトと肩紐(肩ベルト)は浮き(身体との隙間)がなく、小柄な日本の女性にもぴったり調整できるかどうか必ず確認してください!「日本人の体型に合う抱っこ紐」とうたっていてても、それが必ず自分に合うかどうかはわかりません。また、「外国製抱っこひもは大きい」という印象があるかもしれませんが、国内外を問わず抱っこ紐メーカーによって「基準となる大人の体型のタイプ」が様々であるため、一概には言えないのです。
ご購入前にはよく確認し、ご試着をおすすめします。写真のようなハーフバックル(ウエストがバックルでその他は布)のキャリアタイプは、布製の肩紐を引き締めながらぴったりと調整できるため、ママもパパも赤ちゃんも快適です。少しお辞儀をしたときにも、赤ちゃんがグラグラせずに密着していればOKです!
新生児にも密着した抱っこ紐

新生児からの抱っこ紐一覧

抱っこ紐は新生児から同じものを長く使用できる?

「抱っこ紐難民」となり、いくつも抱っこ紐を持っている方を多くみてきました。もちろん、赤ちゃんの成長に合わせていくつかの抱っこ紐を使い分けるのもひとつです。しかし今、新生児や小さな赤ちゃんの抱っこ紐を検討しているなら、メインの抱っこ紐として長く、快適に使えるものをおすすめします。

新生児からおんぶまで長く使える抱っこ紐
抱っこ紐は2歳ごろまで使用することが多いと言われていますが、体重分散に優れている抱っこ紐なら3歳以降も抱っこやおんぶで活躍する機会があります。例えば、山登りなどのアウトドア、病気で弱ってしまったとき、防災などが考えられます。

なるべく長く快適に使用したい場合は、商品説明の対象年齢や体重制限はもちろんのこと、実際の商品設計もよくチェックしましょう。 抱っこ紐はそのブランド創業者の子育てニーズから生まれたものが多いため、新生児からと記載があるものでも、日本の小さな新生児に不向きでブカブカするものや、20kgまでと記載されていても幼児の股幅まで調整できないこともあります。シート幅の調整、密着し体重分散されるか、またいつからおんぶできるかなどの汎用性は大切なポイントとなるので、商品自体をしっかり見極めましょう。 

色んなタイプの抱っこ紐がありますが、自分にあう抱っこ紐とはどのように見つけますか?

ベビーウェアリングコンサルタントやベビーラップアドバイザーなど、赤ちゃんの発達を学んだ抱っこ紐のプロフェッショナルに相談してみてください。お近くで相談できる方がいらしたら、実際に教わることも良いでしょう。販売員ではないため新しい抱っこ紐を購入するつもりがなくても、今もっている抱っこ紐が使用できるか、使い方が合っているかということも喜んで相談できるはずです。また、抱っこ紐がないと相談を受けられないということは決してありませんので、ご出産前や抱っこ紐検討中に相談することもおすすめします。
自分でしっかり情報収集してからでもいいですし、何も知識がない状態でも丁寧に教えてくれるでしょう。また、妊娠中から知っておけば産後のイメージが湧きやすいですし、赤ちゃんが生まれてから相談に行けばより使い心地も体感できると思います。
ベビーウェアリングコンサルタントは、親子の幸せを願っている方ばかりです!安心してまずはお近くのコンサルタントに連絡してみてくださいね。

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堀内千賀子さん堀内 千賀子さん

「良くなる力を引き出す」をモットーに心・身体・エネルギーなどホリスティック(包括的)なサポートを提供してきた整体師。
また、ベビーウェアリング コンサルタントおよびベビーラップ・アドバイザー®︎等の国内外の抱っことおんぶの認定資格を活かし、助産院や子育て広場などで快適な抱っこをお伝えしている場で活躍中。
私生活では4児の母として奮闘中。
HP: 抱っことおんぶの相談会